「あそこの角の家です。」
もうすっかり目が覚めたみたいで意識もはっきりしてた。
「ここ?」
「おう。ありがとうございました。」
「いいのよ。いつも真里亜を送ってもらっちゃって、こちらこそありがとう。」
「いえ。じゃぁまた明日。」
「うん。お疲れ様。」
裕樹が車から降りて、こっちを向いてお辞儀をする。
お母さんもペコッと頭を下げて車を動かす。
私は裕樹に手を振ってあいさつをした。
家に着くと、今度は私に一気に疲れが押し寄せてきた。
「はぁーっ。」
「お疲れ様。お風呂入ってきなさい。ご飯用意してるから。」
「はぁい!」
湯船につかると、今日の疲れがスーッと流れ出ていくみたいだった。
今日の試合、結果は8対4で勝った。
かなりすごいことだよね。
相手のチームだってここまで来た強豪校なんだから。
それなのに4点で抑えるってすごい。
野球って何が起こるかわからないから楽しいんだなぁ。
仁が好きな気持ちが少しわかるような気がした。
私もいつからこんなにも野球のことを好きになってたんだろう。
マネジ、やっててよかったな。
「いよいよ甲子園かぁ。すごいなぁ。頑張って来たもんね。」
今までいろんな学校と試合をしてきたけど、ここまで勝ち進んできたんだよね。
きっとどの学校だって甲子園を夢見てきたんだと思うけど、全部の学校が行けるわけじゃないもんね。
勝つ学校があるんだから負ける学校だってある。
それがルールなんだから。
今まで試合をしてきた学校や、その他の学校の人たちの分も精いっぱいに甲子園で試合をしなきゃ。
って・・・
「私がするわけじゃないんだけどなぁ~。」
お風呂での独り言はよく響いた。