一投目の尾崎先輩の投げた球は、大きく逸れた。
コントロールが利かなくなってきていた。
みんなが尾崎先輩のことを心配する。
「さっきので何球目だ。」
「ファールばっかりしてたやつがい多分増えたよな。」
「数え間違えがなければ今ので130ってとこ。」
普通の高校野球ならこれくらいは普通なのかもしれない。
でも、尾崎先輩は違う。
パンッ―――
「よっしゃぁ!」
マウンドの上から尾崎先輩の声が聞こえた。
「尾崎ー!あと2つだ!」
仁がマウンドにいる尾崎先輩に向かって叫ぶ。
その声が聞こえた尾崎先輩は一瞬だけ口角を上げキャッチャーへ向き直る。
その目は真剣そのもの。
パンッ―――
「「2つー!」」
ついにここまで来た。
バッターもまだ諦めてはいない様子だけど、焦ってるのがわかった。
何度も息を整えるバッター。
そして尾崎先輩も、その球に最後の力を振り絞って、投げた―――
カスンッ―――
ん?
今何か変な音がした、よね。
その音は金属バットに球が当たった音。
でも、その音はいい音ではなかった。
「「っっっしゃぁー!」」
「え?」
「試合、終了。」