「裕樹は治して野球やろうって思わなかったわけ?」


「思ったけど、途中で折れた。でも、今こうやってマネジやってるから嬉しいかもな。」

「そっか。」


カーンッ―――

私と裕樹が話をしている間にも、バッターはファールボールばかり打ち上げていたみたい。


でも、その音はファールじゃなかった。


「レフト取れよ!」


ベンチから叫ぶみんな。

レフトは確か・・・仁だよ!


「これ結構伸びてんな。落ちろよ・・・」


隣で裕樹がブツブツ言っている中、私はただ仁と球を交互に見つめていた。

心の中で「取って!」と言いながら。


ドサァーッ―――


仁が、跳びました。



「あいつ、ファインプレーじゃん!」


「最高ー!神野ー!」


え?ファインプレー、ってことは仁がボールを取ったの!?

「すげーなあの人。」


「「ワンアウトー!」」


みんなが叫ぶその声は、グラウンド中に響き渡った。

仁のユニホームが真っ黒になっている。


頑張った証がそこにはあった。

あと、アウトは2つ。


次のバッターは、ここはさすがの尾崎先輩も波に乗って三振!

これでツーアウト!


残るは、1つ!


ここで4番バッター。

尾崎先輩もみんなも緊張している。


ここでできれば塁には出さずに終わりたい。

尾崎先輩も限界に近い