「この回守り抜け、お前ら!」
「「はいっ!」」
尾崎先輩もみんなもすごく気合が入っている。
この回を押さえれば、うちは甲子園へ行けるんだから!
相手チームのバッターは2番。
この人割と打つんだよね。
でも、身長が低めのせいか飛距離はそこまで伸びない。
だから守備も前よりではある。
尾崎先輩がそのボールを投げる。
パスッ―――
「トライッ」
まずはストライク。
続いて、ボール。
その次もボール。
そして、ストライク。
結構きつそうな表情の尾崎先輩。
ここまで尾崎先輩が投げてきた球数は、今ので121投目。
息もだいぶ上がっていてかなり辛そう。
次の球は、バッターが打ち上げたけどファール。
おしいなぁ!
「尾崎先輩、意外に肩弱いからな。」
「え、そうなの!?」
「そう。2年だったとき肩壊したのに、無理やり治してピッチやってんだぜ。無茶だろ。」
肩を壊したのに治して投げてるって、相当すごいことだよね。
「病院の先生も驚き。リハビリを毎日人の3倍はやってたらしい。」
「それはすごいよ。そんなにピッチャーやりたかったのかな。」
「だろうな。負けたくないやつがいたんじゃね?」
負けたくない、ってやっぱり仁のことかな。
チラッと仁を見るとベンチから一点を見つめていた。
きっと今の仁の目には、尾崎先輩しか映ってないと思う。