そして、仁が私の方を向く。


でも、仁は口をポカンとあけて「ははっ」って笑った。

私に近づいてきて、私の頭に手を置いた。


「真里亜、なに泣いてんだよ。まだ早いって。」

「え?」


泣いてる?

誰が?
私が?


そっと、頬に手をやると私の指に冷たい滴が付いた。

それは私の目からあふれた涙だった。


「気づいてなかったのか?バカ?」

「バカって言わないでよ!なんでかわからないけど、涙が出たのよ!ほっといて!」


「怒んなくたっていいだろ?まぁ、これからもしっかり応援しろよ!」


それだけ言って離れて行く仁。

でも、本当になんで涙なんて出たんだろう。


「自覚ねぇとおもしれ。しかもお互い。」


「裕樹!さっきからなによ!」

「さて、次々っ」


また逃げられた。

ほんとに、何なのよ!


カーンッ―――


グラウンドに響いたその音は、尾崎先輩の打った音。


しかも、その球はスタンドに消えた。


あら?

え?


はい!?


「ホームラーン!」

「「おぉ~!」」


尾崎先輩がベールを蹴って帰ってくる。

「神野に負けてらんねぇし。」

「言いますなぁ。」


キャプテンと仁ってライバル同士なのかな?