「真里亜、最近神野先輩のことばっかり見てっから。つけてみたらいんじゃね?」
これはおそらく裕樹からの気遣い。
裕樹は多分私の気持ちに気がついてる。
意地悪な笑みをする裕樹だけど、こういうところはなんというか・・・優しい。
性格、いいのか悪いのかイマイチわからないけど。
「ありがとう。じゃぁつけるね。」
「一応神野先輩に伝えとけよ。」
「どうして?」
「打率、伸びんじゃね?」
私がスコアをつけるって言ったら、仁の球の打率が伸びる?
まさか。なんでそうなるのよ。
「早く、言いに行けよ。」
「・・・はぁい。」
しぶしぶ仁に私がスコアをつけることを伝えた。
で、本当に変わっちゃったわけです。
今までより良い音がし始めたなぁって思ったら、ホントに打率がどんどん伸びて行く。
私、何かしましたっけ?
部活が終わって、仁にそのことを聞いたけど「なんか、やる気出た」って言うだけ。
裕樹は何となく笑ってるし。
裕樹が何かしたのかな。
帰り道、裕樹に聞いてみることにした。
「裕樹、なんで今日は私が仁のスコアをつけたら打率が伸びるって分かってたの?」
「は?確信はしてなかったけど、まじで伸びると思わなかった。」
「適当に言ったの!?」
「いや、こういうのは半信半疑って言うべきだろうな。伸びる気もしたし伸びないような気もした。」
カンってやつですか。
それなのに、仁はホントに伸びちゃったってわけね。
良いのか、悪いのか。
まぁ、良いのか。