しばらく二人の間で沈黙が続く。
何を言っていいのやら、どうしたらいいのやら、さっぱりわからない。
仁は今何を思ってるのかな。
うちに来てどう思ってくれたのかな。
聞きたいけど、聞けない。
「あのさ」
その時、仁が口を開いた。
私の顔が自然と明るくなる。
自分でもわかるくらい、顔が熱い。
「なに?」
「家族って、なに?」
「え?」
「家族ってどんな存在なわけ?俺、今一人暮らしじゃん。まぁ、無理やり家出たみたいな感じなんだけどな。」
「なんで家を出たの?」
「親のことが嫌いだから。」
また、ストレートにそんなことを言われると結構私もキツイ。
家族のことが嫌いっていうことがヒシヒシと伝わってくるようで心が痛い。
「兄弟とかいないの?」
「いない。息子として俺一人だな。」
「なんでご両親を嫌うの?」
少し仁の顔が曇る。
まるで、少し前までの私みたいに。
「親父は俺の本当の親父じゃないから。」
「はい!?」
「なんだよ、そのリアクション。」
だって、私とまるかぶりってわけじゃないけど同じようなことだもん。
驚く意外にないでしょう。
「親父はさ、俺のことすげー嫌うっつうか、すぐキレてくるしウザくてさ。」
「そっか・・・。」
「母さんは、そんな親父をかばうんだ。実の息子の俺よりあの親父の方が好きみてぇだし。だから、高校入ったら家出ることを勝手に決めてた。」