数分後、てくてく歩いてくる人影が見えた。


その姿は彼しかいない。

「仁っ!」


「・・・おう。」

あなたの過去を知ってしまっても、私はあなたのことを見捨てたりしないから。

仁も、こうやってまた私に会いに来てくれて、ありがとう。


「来てくれたんだね。」

「あのな、俺はお前ともう関わりたくないわけ。」


「うん。」


「今日が最後だかんな。」

「うんっ」


「・・・そんな嬉しそうな顔すんなよ。」




「本当は悲しいよ・・・。」


「ん?なんか言った?」



小さな声で言った私の言葉は仁には聞こえなかったみたい。

それでいいの。


だから私は「なにも?」と言って仁を家の中へ招いた。



最初はうちのお母さんや真咲も驚いたようで。

まさか、男の子だって思わなかったみたい。


そういえば「今日友達がご飯食べに来るかもだから」しか言ってなかったっけ。


「こんばんわ。すみません、お邪魔してしまって。」

「いいのよ!かっこいいわねっ。」
「お母さん!」

「えへっ。じゃぁちょっと待ってて。」

「こんばんわ!お兄さんお名前は!」


「え、あ、神野仁です。」

「私、真咲です。ご飯一緒に食べるの?」


「そうよ。あ、神野くん適当に座っててね。真里亜、案内してあげて。」

「すみません。」