帰り際にドアを閉めかけたとき、わたしは剛の瞳に、あのときのいつもと違うまなざしが再び浮かんだような気がした。


でもそれは、単なるわたしの気のせいだったのかもしれない。





三月。


高校の三学期がまもなく終わりを告げる。


高校一年生として過ごす時間は、もう残りわずかだ。



ホワイトデーの前日、剛はホワイトデーのプレゼントを渡したいから、公園で待ち合わせしようという内容のメールを送信してきた。


わたしはOKのメールを返信し、わたしたちは駅の近くにある公園の一番大きな花壇のところで会う約束をした。



近頃は、春の息吹が盛んに感じられるようになってきた。


約束の場所に向かうため、公園の中に足を踏み入れたとたん、ほんの少しだけ顔を覗かせている木々の新芽や、まだ固い桜の蕾が目に飛び込んできた。


花壇を見ると、すでに花を咲かせているところもあった。



やがて待ち合わせ場所の一番大きな花壇が見えてきた。


この花壇は、公園のちょうど中心辺りに位置していた。


この花壇に植えられた花は、まだ咲いてはいない。


そして花壇のそばには、大きな木のようにすっくと立つ剛の姿があった。


わたしは剛に駆け寄った。