「でも麻里奈、どう見ても風邪ひいてなさそうだけど・・・。だったら、なんで今日、学校休んだんだろう?」


わたしは首をかしげた。


「うん、そうだよね。麻里奈が学校さぼるなんてありえないし・・・。何かにおうな・・・。」


梓はいぶかしげに言った。


「におうって、何が?」


「麻里奈と一緒にいる男が怪しいってこと。それにあの男、どこかで見覚えがある気がする・・・。」


ビルから出たあとも、梓はときおりピカチュウの頭をなでながら、過去の記憶の綱をたぐりよせようとしている様子だった。




駅の真ん前までたどり着いたとき、梓が突然大きな声を上げた。


「あっ、思い出した!」


「思い出したって、麻里奈と一緒にいた男の子のこと?」


わたしはたずねた。


「うん、そう。」


梓は答えた。


「あいつ、わたしと同じ中学に通ってた。確か、わたしたちより学年は二つ上。」


「それで?」


「あいつ、中学で有名だったんだ。」