噂ですけど、と前置きをして真っ先に口を開いた男は人差し指を立てた。

「何でも今度はメルディの女だって!」

「……メルディの女なら、今までも何度か手を出したことあるぞ」

何故噂になるのかわからない、と首を傾げてみせれば、別の男が得意げな笑みを浮かべた。

「それは、今度の相手が隊長の大本命って話だからですよ!」

「そうそう。他国での武勇伝なんて普通噂になりませんからね。相当本気だって評判ですよ」

自信満々に語る部下たちに、アデルは肩を竦めてみせた。
ノルンに頼んだだけで、こうも簡単に話が広がるとは。

「噂だ何だと騒ぐ前に、お前たちは現実の俺を見ているじゃないか。どうだ?噂は真実だと思うか?」

にやりと人の悪い笑みを浮かべて見せれば、男たちは悔しそうに足踏みをした。

「あー!その余裕そうな感じが腹立たしいっす!」

そうか、と楽しげに笑うアデルに、男たちは益々声を荒げた。