ジョシュアとルイが団長の下に潜り込んでから三日後のこと。
優越感を隠し切れずににやにやと笑う団長を、いい加減見飽きた頃だった。

アデルは町を歩いていたところを、花屋の前でタクトに呼び止められた。
隣では鎧よりもよく似合うエプロン姿で花の世話をするルークの姿があった。

「アデル様、丁度いいところに!」

タクトの声で顔を上げたルークは、アデルの姿に頭を下げた。
自然な動作で片手を上げると、アデルはふらりと花屋へ足を向けた。

「どうした?生憎だが、今は花をプレゼントしなければならない相手はいないぞ」

「最近アデル様のシェーダ内での女性の噂は聞きませんからね。私たちも商売上がったりです」

冗談めかして笑うタクトに、アデルは苦笑してみせた。
案外的を射たジョークである。

タクトは一旦奥へと入ると、大きな薔薇の花束を抱えてアデルの元へ戻ってきた。
両手一杯の薔薇たちに、アデルの頬がぴくりと引きつる。

「そんな連れないアデル様に焦れた御方から薔薇の贈り物を承っております。どうぞ」

にっこりと笑うタクトと、攻撃的なまでに大きな薔薇の花束。
そして、紅い薔薇の間に挟まる小さな紙を見比べながら、アデルは複雑な表情を浮かべていた。