団長の額に玉の汗が滲むのを確認して、ジョシュアは柔らかな微笑を浮かべた。

「……ふふ。理由なんてどうでもいいですよ。私は私の安全のために、団長のお力を貸していただくだけのことです」

団長は気付かれぬように小さく息を吐く。
余計なことを言わずに済み、心底安心しているのだ。
自分の半分の年程度の男に圧力を感じることを情けなく思ったが、額を濡らす汗は誤魔化しようがない。
団長は手の甲で額を拭い、引きつった笑みをジョシュアへと向けた。
返すジョシュアの微笑は、優雅さに満ちていた。

「しかし、デモンドですか。……貴公とデモンドが繋がっている証拠はおありで?」

「証拠?」

「えぇ。……あのペテン師の下で今までやってきましたから、無条件に人を信じることは出来ないのですよ」

この一言は、大いに説得力のある一撃となった。
少しでもアデルを疎ましく思う人間ならば、すぐに共感したくなる内容だったからだ。

そして、その証拠こそが、ジョシュアとルイの目的である。
好きになれない悪趣味な笑顔を見せた団長に、ジョシュアは内心でほくそ笑んだ。