ジョシュアがアデルに付いていかないわけがない。
そして、その望みを叶えさせてくれたのが、今はベッドで丸くなる少女であると思うと、いたたまれない気持ちになるのだ。

「とにかく、現在我々は押されています」

「そうだな……」

「……私は、沈む船にいつまでも乗っているような愚を犯すつもりはありませんよ?」

ジョシュアは口元だけを吊り上げた狐のような微笑を浮かべる。
暗に、団長の背後の存在を示唆するような声音であった。

貴方の乗る船に、私も乗せてはいただけませんか?

団長には、ジョシュアの言葉がそう聞こえた。
すぐには返す言葉が見当たらず、団長は引きつった笑みをジョシュアへ向けた。

「随分と過激な発言がお好きなようだ。それでは反逆者と疑われてしまうぞ?」

「おや?貴方の口からそのようなお説教をされるとは……」

心外です、と肩を竦めたジョシュアに団長は唾を飲み込んだ。
ジョシュアは、団長が裏でデモンドと手を組んでいることを知っているのだ。
だから、身の保身を理由に団長に近付き、現在だけでなくシェーダ国がデモンドに支配されたのちの身の安全も確保しようとしているのだ。

そこまで思い至り、団長は恐ろしさを感じると同時に感心した。
そして、この頭脳と先を見据える瞳が欲しくなる。