城内でアデルと擦れ違う際に笑いを堪えるのが大変だった、と騎士団長は笑った。
ルイを人質に差し出した翌日、ジョシュアは彼に呼ばれ再び部屋に訪れたのだ。
差し出された紅茶は高級な葉を使っているようだが、くどい後味が騎士団長の性格そのもので、ジョシュアの口には合わなかった。
「私もですよ」
「そうだろう、そうだろう」
貴方が見事に油断してくれたので、と内心で付け足し、ジョシュアは不味い紅茶を啜った。
そっとベッドの上に視線を送れば、薄いカーテンが引かれ、丸い膨らみが見えた。
ルイが身体を丸めているのだと思うと、心が痛んだ。
「アデルの女、思っていたより楽しめたぞ」
「そうですか。私には女の善し悪しはわかりませんが……」
あまり聞きたい話ではなく、ジョシュアはやんわりと話を切った。
そして本題とも言える話題を引き出すための餌をちらつかせる。
「しかし、私は心配なのです」
「何がだ?」
「この戦、我々が勝てるのでしょうか?」
ほう、と騎士団長は片眉を上げた。
特に止められることもなかったので、ジョシュアはそのまま話し続ける。