だが、団長が横たわるルイを跨ぐように膝を付いたため、ルイは逃げることが不可能となった。

「泣き叫ぶ女を無理矢理ものにするのもまた面白いな」

「っ……私は、アデルさん以外のものになんてならない……!!」

涙の浮かんだ瞳でルイは団長を睨み上げた。
気持ち悪いし、嫌で嫌で仕方がない。
アデル以外に触れられるのは、不愉快以外の何物でもない。

(負けない)

戦う、と決めたのだ。
これはルイにしか出来ない武器を持たぬ戦いだ。
ルイを人質としてジョシュアの信用を高め、証拠を見つけだす。
そしてこれは、本来の目的である戦争終結のための手段なのだ。

策を告げたときのアデルの苦しそうな顔を、ルイは覚えている。
人を利用することに慣れたアデルが、最後までルイが断ることを期待していたのだ。
だから、ルイはその期待を裏切ることを決めた。
アデルが痛い程にルイを想っている事がわかったから、ルイには怖いものはなかった。

喜んで、彼の駒になろう。
そう決めた少女は、折れない心でこの場にいるのだ。