騎士団長にも好みというものはあるらしいが、彼は基本的に平均以上の容姿と若さの娘には手を出す。
そしてそれが、何のデメリットもなく抱けるのなら迷わないだろう。

「ルイはまだ若い。……それに、贔屓目に見ても可愛いほうだ」

若いというよりは幼いのほうがしっくり来る気もしたが、団長にとってはどちらも同じだろう。
人質として手元にあれば、手を出しても咎められることはない。

「団長は貴方が嫌いだから、その腹いせにもルイのこと……」

身体を傷つけられるのではなく、もっと深い部分をいたぶられる。
それが、アデルの最も恐れることだった。

「それでも行くと、ルイは言った……」

誰に触れられようと、心はいつも貴方へと向かうから。
だから、大丈夫。

どうしてあの時、ルイは笑えていたのか。
敵地に送り込むような最悪な男を、それほど信じてくれているというのか。

ならば、アデルもいつまでもうなだれてはいられない。
ルイとジョシュアが危険と隣り合わせで証拠を掴もうとするのだから、その先へと繋がる道をアデルが作らねばならないのだ。

謝るのは、ルイが戻ってきてからだ。

「忙しくなるぞ、ノルン」

生気に満ちた金色の瞳に、ノルンは頼りがいのある笑みで応えた。

「えぇ」