ノルンは、騎士団長との任務は経験したことがなかった。
彼の色欲を知っているエルクは、騎士団長の部隊に女性騎士は入れず、共に任務を行うことも避けていたのだ。
それにより若き男性兵士に害が及ぶのだが、兵士は王に伝えることも出来ずに耐えることしか出来なかった。

しかし、現在は騎士団長の部隊に若い男性兵士はいない。
それは数年前のアデルの働きによる成果である。
その話はアデルにとっても忌々しい思い出でしかないため、蒸し返すことはしない。
ノルンもそれをわかっていて、わざと明るい声を上げた。

「来る者拒まずのアデルには言われたくないんじゃないかしら?」

ノルンの気遣いを察したアデルは、呆れた様子で微笑を浮かべる。

「かもな。だが、俺は別に性欲を持て余してるわけではないぞ」

「そうね。貴方が相手に困っているところ、見たことないもの」

とても婚約者の口から笑顔で出てくる言葉とは思えない。
アデルは肩を竦めてみせると、苦しげに眉を歪めた。