アデルの大切な弟子をジョシュアが手土産に持っていけば、どうだろうか。
仲違いは演技ではなく、ジョシュアは本気でアデルに怒りを感じていると思わせることが出来るだろう。
まさか、アデルが自ら指示をして人質として差し出しているとは思うまい。
それが大切にしている者なら尚更に。
そして、騎士団長のような貴族たちには、ルイも自ら危険な役を引き受けるとは考えられない。
自らの保身が一番の彼らの辞書に、自己犠牲という言葉はない。
その話を聞いたルイは、動揺することなく、頷いた。
「アデルさんの言う通りだと思います。確かに、自ら人質になるなんて考えにくい」
怯えも不安も映さない、闘志に燃える瞳には、止めるという選択肢は初めから除外されていた。
ノルンも、ジョシュアも、アデルの策には驚き、反対の意を示したというのに。
ルイは、やると言った。
戦いを止める、或いはアデルの力になりたい。
そう願うルイの想いは、誰よりも頑なだった。