ジョシュアは、上手く団長に取り入ることが出来たのだろうか。
いや、そこは心配していない。
アデルの部下である彼もまた、ペテン師の才能を持っているのだから。
ノルンが心配するのは、その身を武器に丸腰で敵に向かったルイのことであった。
「大丈夫かしら、ルイ……」
ノルンの呟きに、アデルは微かに顔を俯ける。
「あいつの人質としての価値は絶大だ。俺の前にルイを出すまでは傷つけるようなことはしないだろう」
淡々とした口調に、ノルンはアデルを睨み付けた。
だが、すぐにノルンは目を逸らす。
恋人を自ら人質に使って平気な人間が、血が滲む程に強く拳を握り締めるわけないのだから。
「……ルイは、俺が思う以上に強い。だから……」
大丈夫だ。
口の中で呟いた言葉は、吐き出されずに消えた。