「ジョシュアの奴め……。本気で殴りやがって」

口元を押さえながら忌々しげに吐き捨てた幼なじみに、ノルンは溜め息しか出なかった。

「本気で殴らなければ誰も信じないでしょう?」

「それにしても……。ったく、俺の顔に傷が付いたらどうする気だ」

「そうしたら、きっとジョシュアが責任を取って貴方を貰ってくれるわよ」

冗談には聞こえない冗談に、アデルは眉をしかめてノルンを見つめた。

「……笑えないぞ、それ」

ジョシュアなら、本気でやりかねない。
ノルンは苦笑し、窓の外を見上げた。
視界に入る城の中では、すでに戦いが始まっているのだ。
ヤーデ家の邸宅に居座ったノルンは、不安そうに家主を見つめた。
彼は平然と椅子に座り足を組んでいたが、活力に満ちた金色の瞳は微かに淀んでいた。