どこかで見たことのある少女であった。
招き入れられたジョシュアは少女の髪から手を離すと、自由を奪われた彼女の背中を突き飛ばした。
両手を塞がれた少女は何とか身を捩り、顔から床に激突することは回避した。
だが、肩を強く打ち付け、その痛みに発することのない呻き声を上げた。
ジョシュアは悠々と部屋に入り、団長が扉を閉めたことを確認すると、彼は見る者を魅了する悪魔の笑みを浮かべて、振り返った。
「私の話を聞いていただきたいのですが」
息子以上に歳の離れたジョシュアの笑みに、団長は背筋を凍らせる。
そして、視線を床で身を縮める少女に移したときに、それが誰であったかを思い出す。
メルディ国の騎士で、アデルが弓を教えている新人。
アデルとジョシュアの対立を利用して、アデルの動きを制限してやろうと考えていた団長は、想像以上のものを引き当ててしまったらしい。