「騎士団長!」

打ち付けるようなエルクの声に臆することなく、アデルは冷たい瞳で真っ直ぐに騎士団長を射ぬいた。
見つめられた騎士団長のほうが、引いてしまうほどに静かな炎が金色の瞳に燃えていた。

「ジョシュア・ヒューバードの、副隊長からの解任を要求します」

「……!」

騒めきが広がる中、アデルは眉一つ動かさず、彫刻のように整った顔立ちで騎士団長を見上げた。
隣に跪くジョシュアの瞳が大きく見開かれた。

「っ!」

床に付いたジョシュアの拳が握り締められる。
それは予想通りで、或いは期待通りの行動となった。

「ぐっ!!」

ジョシュアの拳がアデルの頬を強かに殴り付けた。
体重の乗ったジョシュアの一撃を心構え無く食らったアデルは、王座の前に不様に倒れこむ。
ぎり、と奥歯を噛み締める音が聞こえてくるようだった。

「お、落ち着け!」

大臣の一人が立ち上がり、片手を振り下ろす。
同時に控えていた兵が二人掛かりでジョシュアを後ろから押さえ付ける。

「……!離せっ……」

「……」

身体を起こしたアデルは唇の端を拭うと、呆れた瞳でジョシュアを見上げる。
その冷たさに、益々ジョシュアは眉間のしわを深くする。