イアンは数瞬の間、言葉を探して視線を宙に彷徨わせた。
言葉を見つけたイアンは団長を見つめ、たどたどしく考えを述べていった。

「彼は信用できると思ったんだ。だから僕は身分を明かして、誠意を見せたかった」

「信用できる根拠は何なのですか?」

「……ライラからの指摘に、誤魔化そうとせずに答えてくれた。それに、戦の話を聞いていたのに彼は逃げたりせず、村にいた。村長として村人を守るという責任感の強さを感じるんだ」

暴れていた男たちを捕えてわかったことだったが、彼らはこの村の村人ではなかった。
つい先日税が納められなかったため、領主から焼き払われた村の生き残りであった。

「この村の人たちは、苦しくても生活出来ているように見える。それはきっと彼の努力だと思うんだ」

領内の村はどこも限界まで搾取されている。
戦が起きているのだから、国境に近いこの領は危険であった。
そのような状況でも、逃げ出さずに役目を果たしている。
その姿に、イアンは好感を持ったのだ。