「イアン様、何を……!?」

「メルディの……イアン……!?」

同盟国の王の顔がわからなくとも、名前がわからないということはない。
目の前の恩人が隣国の優しき王であると知った村長は、まだ本調子でない身体でベッドに両手を付き頭を伏せた。

「この度は我が村の危機を救っていただいたというのに、十分な歓迎が出来ず申し訳ありません!」

「無理はしないでください。まだ怪我は治っていないのですよ」

「しかし……」

「僕はお話を聞きに来たのです」

頭を下げていては話が出来ない。
そう言って、村長はゆっくりと顔を上げた。
そこには不安と罪悪感の混じった複雑な表情が浮かんでいる。

「ごめん、驚かせてしまったね」

イアンは団長を振り返り、悪戯を咎められた子供のように身体を小さくした。
団長がイアンの身を案じていることはよくわかっていたから、独断で身分を明かしたことが後ろめたい。