イアンが慌ててライラの腕を掴んだ。
いきなりすぎると視線で訴えたが、ライラは軽く首を振っただけで村長に目を向けた。

「こいつは何か知っている。……違うか?それも、普通より深い何かをだ」

深緑の瞳に睨み付けられて、村長は思わず身動ぐ。
些細な粒でも逃さない細かな網目の網が、村長に絡み付く。

「先程は戦争など知らないと言っていたが、それなら何故村人の申し出をエルク様へ渡さぬ輩がいると判断出来る?戦争のなかった今までなら、申し出もしっかり届いていたはずだろう?」

エルクに回さぬようにしだした人間は、戦争が始まってから生み出されたものだ。
戦争の事実を知らない村長が、エルクを騙す人間がいるということを考えるには無理がある。

淡々と指摘され、村長はため息を吐いた。
そして、申し訳ないと頭を下げる。