「エルク王が訴えを無視しているのか、王の耳に話が入らぬようにしている人間がいるのか……」

「おそらくは後者でしょう」

確信を秘めた口調に、ライラは引っ掛かりを感じずにはいられなかった。
先程、シェーダ軍の侵攻は知らない様子だった村長が、さも城の内情を知っているかの如く頷くのはおかしい。
村長は背筋を正すと、イアンへと向き直った。

「ところで、聞きたいこととは何でしょう」

傭兵団がシェーダ国について教えてほしいという理由について、村長が思いついたのはイアンたちが兵に志願しようと考えているからだというものだった。
故に現在の状況を聞き、雇い主として適しているか否かを測ろうとしているのだと。
その程度なら答えたところで問題はない。
そう考え、自然体で質問を待ち構えていた村長は、ライラの質問に目を丸くした。

「エルク王を唆し、メルディ国への進軍を勧めたのは、誰だ?」

ある程度シェーダ国内の様子を知っていて、現状を斜めに抉り取ろうとする質問に、村長の中ではっきり警戒信号が鳴った。
もちろん、唐突に確信を付いたライラの問いにはイアンと団長も驚かされている。