思案の海からライラを引き上げたのは、村長が語りだす領主の不正の話であった。

「我々の領主の増税額は、明らかに他の領地より多いのです」

「それは、領主が嘘の税を貴方がたに課して、差額を懐に入れているということですかな?」

理解の早い団長に、村長は弱々しく微笑んだ。

「はい。ですがそのことを領主様に申し上げても聞き入れて頂けず、王都に直接訴えても、何もしてくれないのです」

「領主の不正をそのままにしているのですか……!?」

驚愕に目を見開くイアン。
そこまで驚く理由がわからず、村長はぎこちなく頷いた。

正義感に溢れ曲がったことを許さない、時には行きすぎることもあるが善悪の区別ははっきり付けているあのエルクが、そのようなことをするとはイアンには信じられなかった。
いや、信じたくなかった。