詰めが甘いというか、そもそもやり方が雑というか。
ライラにしてみれば、失笑を禁じ得なかった。
そして、思うのだ。
アデルならば、そのような愚は犯さないだろうと。
(つまりあの男は、今回の戦において、シェーダ軍のためには全く頭を使っていないということか)
それが誰によるどういった意図のものかはわからないが、穴の空いたザルのようなシェーダ国の戦い方からアデルの反抗心が感じられた。
(ルイは、どうなっただろうか)
アデルをメルディ軍に引き込むための重要な役割を担った仲間の後ろ姿を思い出す。
仲間に引き込むことに心配はしていない。
ライラが懸念しているのはその後であった。
(アデルにとってルイはアキレスの腱に等しい……)
敵陣の真っ只中に身を置いた、人質の価値の高いルイを心配せずにはいられなかった。