増税の原因は、メルディへの進軍だろう。
イアンは、市民がメルディへ抱く想いが気になっていた。

「先日、シェーダ軍はメルディ国を攻めました。増税はそのためでしょうか?」

遠回しな質問から入っていこうとしたイアンは、村長の答えに驚きを隠し切れなかった。

「シェーダ国は、戦争を仕掛けたのですか……?」

初耳だとでも言いたげに眉をしかめた村長の表情からは、悪意を持ってイアンを騙すような意図は感じられなかった。
黙って話に耳を傾けていたライラが、元から深い眉間のしわを更に深めて舌打ちをした。

(国民に戦争を知らせてないのか?意志の統一は重要事項だろう)

戦。
それも国と国による戦争にもなれば、国民の意志を統一させることは必要なことである。
自国の正義を説き、敵国を設定し憎しみの対象とすることで、国民からの協力を得て初めて国内の準備が始まる。

食料を生産するのも、兵士として戦場に出るのも、国民なのだ。
国民が非協力的な状態で戦争のための搾取を行えば反感が強まるのは明らかである。