「大切なのはそこではありません。貴方がたは私たち村を見捨てず、助けてくださった。見ず知らずで何の得もないというのに、こうして今も協力してくださっている」

村長が開け放たれた窓の外な視線を向ける。
まだ瓦礫や倒壊した家は多いが、外では村人とメルディ軍が共に瓦礫の片付けをしていた。
時折、楽しげな笑い声もこちらへ届く。

「貴方たちがいなければ、こんな笑い声など聞こえなかったでしょう」

村長の手が、優しくイアンの手を包んだ。
ほんのりと熱を持ったその手は、まだ村長が本調子ではないことを物語っている。
それでも彼が話をしたいと申し出てくれたのだからと、イアンは熱には気付かぬふりをした。

「シェーダ軍は我々を助けようとはしません。現在のこの国は、何かがおかしい」

村長は瞳を陰らせ、目を伏せた。
本来ならこの騒ぎは近辺に駐留していたシェーダ軍が鎮めるべきだった。
すでにこの国は傾き始めたのだと、村長は言う。

「先月辺りから税が引き上げられ、最近さらに増税したのです」

元々がそう高い税ではなかったのだが、二度の増税は強かに市民の生活を抉り取った。