アデルが自身の作戦を信頼できる面々に告げたのと同じ日、イアンが偶然騒ぎに気付き助けた村の村長は、ようやくゆっくりと話が出来るまで回復した。
村長の横たわるベッドを、イアン、ライラ、近衛兵団長が語っている。
彼らを旅の傭兵団だと思い込んでいる村長には、イアンは故傭兵団長の息子で、現在の若き団長であると嘘の説明をした。

「イアンさん、もう一度改めてお礼を言わせてください」

ありがとうございます、と続けて村長は頭を下げた。
イアンたちが村に滞在し始めてから、すでに三日が経った。
その間、メルディ軍は荒れた村の復興に力を貸していた。
壊れた建物の修繕、食料の提供、怪我人の看護など、まるで自国の民のようにメルディ軍は村人を扱った。

「いえ、僕らがもう少し早く気付いていれば……」

このような惨事は起こらなかっただろう。
膝の上で握り締められた拳に、村長はそっと手を伸ばし自分の手を重ねた。