ノルンが頷いたことでルイは安心し、ゆっくりと言葉を続ける。

「税が上がって生活が苦しくなれば、民は政治に不満を持ち始めると思うんです。そんなときに、アデルさんが『この国の政治は間違っている』とあえてシェーダ国を敵に回すような真似をすれば……」

「市民の解放活動、と市民の目には見えるでしょうね」

ルイの見解に驚きながらも納得し、ジョシュアは何度も頷いた。

「確かにアデル隊長がエルク様に背いたら、何も言わなくても市民のために立ち上がったように見えます」

ルークの言葉に、アデルは苦笑せざるをえなかった。
市民たちはアデルに騙されているようなものなのだから。
市民たちが思うほど、アデルは優れた人格者ではないつもりだ。
卑怯で臆病で、少しだけ知恵が回る嫌な奴というのが妥当だろう。

「……まぁ、そんなところだ。そのまま俺たちがメルディ軍に合流すれば、市民の感情はメルディを侵略者ではなく解放軍として迎え入れるだろう」

そうなれば、メルディの進軍はずっと楽になる。