「私がこうしてやってきたことは偶然でしたが、イアン様から許可を頂いています」

ジョシュアに誘われたあの日、ルイは身仕度を整える前にイアンの元へ向かった。
そして、自分の我儘を許してほしいと頭を下げたのだ。

意志の強い瞳でルイは机を囲む面々を見渡した。

「イアン様は私の判断に全てを任せると言ってくださいました。この戦が終わるために、君が出来ることを、信じたことをやりなさい、と」

見送ったイアンの自信に満ちた笑みが、ルイの脳裏に焼き付いている。
ルイへの信頼が、イアンを強く立たせていたのだ。

「それに、ライラからも言われています」

ライラ、の名にアデルの眉がぴくりと動く。
それはルイに惹かれるライラへの不安からではなく、知略に富んだ尊敬すべき軍師からの言葉への興味に起因している。

「アデルさんが本気で戦を止めるつもりなら、全力を貸してもいい、と」

ライラからの伝言を伝え、ルイは正面のアデルににっこりと笑いかけた。

「ライラの全力は高くつくそうですから、戦を終わらせてからの後払いでよろしくだそうですよ」

そんな冗談を、相変わらずの仏頂面で言ったのだろうか。
想像して、アデルは笑いを堪えるのに必死だった。