全員が、アデルの言葉を待っている。
自身の言葉の重さを自覚し、アデルは慎重に口を開いた。

「この戦を終わらせるために必要なものは二つある。一つはデモンドが手を回していることへの物的証拠。そしてもう一つはメルディ軍の協力だ」

アデルはそこで一度、ルイを見た。
はっきりと頷いたルイは真剣な表情で口を開く。

「私たちメルディ軍は平和的解決のために動いています。計画ではイアン様自らがシェーダに進軍し、この王都へ向かっております」

結局、エルクはメルディ国との会談を拒否した。
裏切り者の言葉に耳を傾ける気はないと言い切ったのだ。

「しかし、現在のエルク様のご様子では、例えイアン様がいらしても説得は難しいかもしれません」

「そうだ。だからこの戦争を裏で操っているのはデモンドだという証拠をエルク様に見せねばなるまい」

アデルの言葉は最もである。
今のままのエルクでは、イアンの言葉も届かないだろう。
それは彼が縋るように嘘の情報を信じてしまっているから。
だから、王都にいるアデルたちはイアンが到着する前に証拠を手にしなければならない。