目を覚ましたとき、確かに昨夜腕に抱いて眠ったはずのルイの姿が消えていて、アデルは飛び起きた。

「……!」

声を上げそうになり、慌てて飲み込む。
先に起きたルイがベッドを出てどこかへ行ったのだろう。
そうだ、そうに決まっている。

(だが、どこへ?)

急速に胸を占める不安。
昨日まで傍にいたものが、簡単に消える。
アデルは何度も、そうやって大切なものを失ってきた。

いても立ってもいられず、アデルは昨晩脱いだ上着を羽織ると勢い良く扉を開いた。

「わ!?」

扉の向こうから聞こえた驚きの声に、アデルは安心しきった息を吐く。
髪を下ろし、盆の上に朝食を並べ持ってきたルイは、変わらぬ笑顔をアデルに向ける。

「おはようございます、アデルさん」

「あぁ……」

よかった、と呟けばルイは首を傾げる。

「大したことじゃない」

アデルは自然な動作でルイの顎を持ち上げると、無防備な唇をそっと奪った。
触れるだけでは我慢できずにルイの唇を軽く舐めれば、抗うことなくルイは唇を薄く開いた。
ルイの手からお盆を奪い、顎を持ち上げた手をルイの後頭部に回し頭を固定した。