粥は村人にも分けているため、完全に腹を満たすことは難しい量であったが、孤児院育ちのユリアは気にするところではなかった。
むしろ、カトルの優しさが嬉しい。

(近衛兵団っていい人が多いのね。よかった)

親友であるルイが常に身を置く場だから、出来る限り良い環境であってほしかった。
小さくなる背中を見つめながら、お椀に口を付ける。
少しずつ口に含めば、思い出したように空腹を主張する胃が早く飲み込めとユリアを急かす。
ユリアは胃の命令には従わず、すでにふやけて柔らかい米を、時間を掛けて咀嚼した。
少しでも空腹を満たすため、昔もよくやっていた。

時間を掛けて半分程食べ終えたとき、ユリアの元にカトルが帰ってきた。
どこから拾ってきたのか、カトルの手には野いちごの実が溢れている。

「ありがとうございました」

「こういうのはお互い様だよ。食べる?」

「あ、ありがとうございます」

カトルが手を伸ばすので、ユリアも反射的に受け取った。
口に含むと、甘味と酸味が同時に広がり、味気のなかった食事に華やかさをもたらした。