村に着いた頃はまだ日が高くあったが、現在は温かな夕日が薄く村を包んでいた。
救援作業に随分と時間が掛かってしまったらしい。
イアンからの伝言を伝えて回るユリアの肩を、カトルが軽く叩いた。

「カトルさん。どうかしましたか?」

振り返ったユリアはゆったりとした笑みを浮かべた。
カトルも微笑みを返すと、手に持っていた木のお椀をユリアへと手渡す。
湯気の上がったお椀の中身は、お湯の多い粥だった。

「さっきからずっと動き回っていたでしょ?僕が変わるから休憩してなよ」

「そんな。カトルさんこそ、休んでいてください」

「僕ら先攻隊はきみたちが手当てに走り回ってた間に少し休憩してるんだ」

だから、と笑みを向けられれば、ユリアはそれ以上何も言えず、お椀を抱えてこくりと頷いた。
カトルは半ば強引にユリアを丁度いい大きさの木材に座らせると、身軽な身体を翻して村の中へと駆けていった。