それに、アデルが死ねばルイは泣く。
他の男のために涙を流す姿なんて、好き好んで見るものか。

わかっていても受け入れたくない気持ちがあることを、ライラはわかっていた。

「立ち直れていない状態なら、さぞかし操りやかっただろう」

「……」

誰かがエルクを唆していることは確実だった。
そうでなければ、いくらショックを受けていたとしても、同盟国に侵攻するなどという愚は起こさないはずだ。
ライラの目から見たエルクという王は、公私混同をするような人間ではなかったのだ。

「ライラの言う通りでしょう。イアン様、看病は私が致しますので、イアン様もお休みください」

「僕は大丈夫」

「休めるときに休む。これは王子が兵たちに言っていることだ」

不敵に笑むライラに反論が出来ず、イアンはしぶしぶながら団長の言葉に従い、椅子に座りながら目を閉じた。

「彼が目覚めたらすぐに起こしてくれ」

はい、と頷く二人の家臣に見守られ、イアンは予想外に背負った重い荷物を、ようやく下ろしたのだった。