「エルク王が苦しむのは当たり前だ。それは相手が王子だったからではない。好きだったミーナ姫が人のものになったからだ」

誰がミーナと結婚しようが、エルクは苦しむとライラは言う。
好きなのだから、苦しいのは当たり前だ。

「後はどうやって自分の感情と折り合いを付けるかだ。王子が必要以上に気に病むことではない」

「だが、僕が求婚などしなければ……」

「ミーナ姫は、デモンドに嫁いだだろう」

まるでイアンをからかうかのように、ライラは軽い口調で目を細めた。

「そうなればどうだ?親友二人で手を組み、デモンドに侵攻でもするか?」

少々度の過ぎた発言に、団長は咳払いしライラを軽く睨み付けた。
つまらなそうにため息を吐いたライラが、切なげに目を細める。
エルクの気持ちも、わからなくはない。
ライラも好きな人を他の男に取られているから。
しかも相手は、認めざるをえない天才で、ライラは余計に腹が立つ。
腹が立つが、そいつを殺してやろうとは思わなかった。
そんなことをしても、ルイが手に入るわけではないとわかっていたからだ。