訓練された近衛兵たちが武器を手に暴れ回る村人を鎮圧するのは容易であったが、それが村人同士となれば被害は甚大であった。

「負傷者多数、死者は確認されているだけで五十名を越えています……」

「……わかった」

ユリアからの報告を受け、イアンは沈痛な面持ちで頷いた。
救護が一段落した今、イアンとライラ、そして近衛兵団長が村長の家で彼の回復を待ちながら指示を出していた。

「君も疲れたろう?みんなにも休息を取るように言ってくれ」

「はい、ありがとうございます」

「村に食料が必要なら、遠慮なくわけてあげてほしい」

イアンの言葉で傍らに立つライラは眉をしかめたが、結局何も言わなかった。
一礼しユリアが出ていくと、部屋には今だに眠り続ける村長と三人だけになった。

「これから、どう致しましょうか」

口を開いたのは、団長である。
王都に向けて進むしかないのだが、他の町や村でも似たようなことが起こっているかもしれない。
その全てに関わることは不可能だと、団長は言葉の外にほのめかしていた。