ユリアは、村の中を駆けていた。
イアンに付いてシェーダ入りした衛生兵は少なく、兵たちが応急措置を手伝ってはいるものの、負傷者は多く目が回る思いであった。

「お姉ちゃん!!」

小さな男の子がユリアの腰へとしがみついて足を止める。
孤児院にいた頃の、淋しさに甘える子供たちの姿が男の子に重なった。
ユリアは男の子の肩に手を置き、目線の高さを合わせた。
涙目でユリアの服を掴み、男の子は涙を零さないよう必死で言葉を紡ぐ。

「お姉ちゃん、助けて……お母さんが……お母さんがっ」

俯いた男の子の肩を抱き寄せ、ユリアは優しく頭を撫でた。

「今行くから、案内して?」

男の子はこくりと頷き、涙が溢れそうな瞳を腕で拭う。
そしてユリアの腕を掴むと、倒れている人たちを避けながら覚束ない足取りで進んでいく。