大方の村人の手当てが完了した頃、ユリアが一人の男に肩を貸しながらイアンの元へとやってきた。
背の高い男であったが、肩から腹に掛けてを鎌で切り付けられたらしく、痛みで老人のように腰を曲げていた。
三十代前半のまだ若い身体を、白い包帯が痛々しく包んでいた。

「この村の村長だそうです」

「貴方が……」

予想外の若さに、イアンは思わず呟いた。
男はそれに慣れた様子で、苦笑しかけて痛みに顔を歪めた。

「あ、失礼しました」

「構いません」

何とか笑顔を浮かべた男性を、ユリアはそっと近くの家の壁へ寄り掛かるように座らせる。

「命に別状はありませんが、これ以上は動かないでください」

「わかりました。ありがとうございます」

ユリアは二人へ一礼し、再び騒めく村人の渦へと身を翻した。
男は澄んだ緋色の瞳でじっとイアンを見上げると、痛みを堪えながら口を開いた。

「助けていただきありがとうございます。頭を下げられず無礼な姿ですが、お許し願いたい」

「いえ、貴方こそ無理はなさらないでください」

イアンは男の目の前にしゃがみ、小さな声でも聞き取れるように顔を近付けた。