「時間が経てば忘れられるなんて、簡単なものではありません……」
ルイも、未だに夢に見ることがある。
孤児院の地下で、子供たちと怯えていたあの日を。
十年の時が過ぎようと、簡単に忘れられるものではない。
だから、情けなくなんてない。
「私は、ここにいますから」
震えが治まるまで、傍にいる。
「もっと弱さを見せてくれてもいいんですよ」
「……そういう生き方をしていないんだ」
「そう……ですね。アデルさんは嘘つきですから」
くすくすと笑う優しい声音に、アデルは眉をしかめて笑った。
「嘘つきか……。あぁ、そうだ。俺はただのペテン師だよ」
力を取り戻した笑い声に、ルイは気付かれないように息を付く。
「甘えるふりをして、お前に抱き付きたかっただけかもしれんな」
「もう……」
それが嘘だとわかっていても、ルイの頬は朱に染まった。