しかし、二人きりの場面で簡単に他の男の名前を呼ばれてしまえば、アデルも少々面白くない。
そんなことを考えているときではないと、わかっていてもだ。
「私に出来ることは、ありますか?」
「……」
アデルはため息にも似た微笑を浮かべた。
結局、アデルはルイを止められないのだ。
「……ルイ」
アデルが考えていた策を口にしようとしたその時であった。
薄暗かった部屋が、一瞬真昼のような明るさに包まれる。
そして数秒後、身体の奥を震え上がらせるような轟音が空から落ちてきた。
「雷……?」
二人は身体を離すと、窓へと視線を向けた。
再び光った空に、ルイはびくりと肩を震わせた。
窓を叩く雨音は強まり、雨はいつのまにか雷雨へと変わっていた。
いきなりの閃光に驚いたルイではあったが、それが雷だとわかると落ち着きを取り戻す。