アデルはそれで納得している。
数名を犠牲にして主を守る。
そのような決断を、何度もしてきたのだ。
ルイはすぐには言葉が見つからなかった。
エルクを守る騎士としては、アデルの判断は正しい。
頭ではわかっている。
だが、罪のない者まで巻き込むというのは、良心が納得出来ない。
「……これが、俺の生き方だ」
髪を梳いていたアデルの手が止まる。
二つの月が、優しくルイを見下ろしていた。
涙が出る程に哀しく美しい微笑に、ルイはアデルの服を掴み、アデルの胸に額を押し当てた。
「……アデルさん、苦しんでいるじゃないですか」
「……?」
「本当は罪のない人は巻き込みたくないって顔、してます」
ルイの言葉にアデルは目を丸くし、少しだけ嬉しそうな微笑を浮かべた。
純粋で優しいルイの心に、自分の中のぐちゃぐちゃしたものが、洗い流されるようだった。
「アデルさんが正しいか間違ってるかは私にはわかりませんが、やはり私は貴方に協力したいです」
ルイはゆっくりとアデルの胸から顔を上げると、空色の瞳を力強く輝かせた。