「誰かに助けを求められなくて、無理ばかりして……それが戦闘中なら、死ぬかもしれないんですよ……?」
アデルがいない世界は嫌だと、ルイは俯いた。
「アデルさんは、アデルさんが思っている以上に周りから想われているんですよ」
ルイは顔を上げると、そっと立ち上がった。
そして、手は離さずにアデルの隣へと腰を下ろす。
二人分の体重を受けとめ、ベッドが微かに沈む。
ルイは自分の頭を、まるで猫のようにアデルの胸へと擦り寄せた。
「ルイ……」
「好きです、アデルさん」
アデルを近くに感じる幸せに胸を満たしながら、ルイは泣きそうな声で言った。
「好きだから、力になりたいのに……」
貴方はそれを許してくれない。
言葉の外側にある非難を察して、アデルは唇を噛んだ。
今まで、頼れる人など誰もいなかった。
自分の身は自分で守る。
貴族連中は信用出来ない。
幼なじみであり、互いに望まぬ婚約者であったノルンには、他の者たちよりはずっと信用していた。
ノルンの持つ情報にも、アデルは助けられた。
だが、頼り過ぎればノルンにも害が及ぶ。
だからアデルは、頻繁にノルンを頼ることはしなかった。