アデルは自分を過小評価しすぎだとルイは思う。
弓の腕も、経験も、知略も、それらはもちろん適うわけがなく、まだ未熟である。
だが、アデルはルイの気持ちを甘く見ている。
たった一度利用されたくらいで嫌になる程度の気持ちを、ルイは知らない。
それに、今回は国の運命すらも抱えている。
アデルの策の通りに動くことは、ルイの騎士としての使命にも等しい。
「私を利用してこの戦争を止める策があるのなら、利用して下さい。私に出来ることがあるのなら、協力したいのです」
「……」
「一人で何でもやろうとしないでください!」
声を荒げ、ルイは瞳に涙を溜めてアデルを見上げた。
溢れそうになる涙を堪えながら、ルイは弱々しく首を振る。
「私……怖い……」
一人で戦うアデルを見ていると、どうしようもなく不安になる。
誰にも頼らずに、一人でいなくなってしまいそうで。
「アデルさんは、勝手にいなくなってしまいそうだから……」
「いなくなる?」
ルイはこくりと頷いた。