アデルの選びたくない、悪戯に他者を利用する策。
それも、最愛の女を使う。
(……俺は、ルイでも利用出来るんだな)
アデルの端正な顔立ちが歪み、自虐的な笑みが浮かべられる。
最愛の彼女を危険な目に遭わせる策でも、簡単に思い浮かぶ自分が嫌になる。
その笑顔をルイが見逃すわけがなく、彼女は首を傾げてアデルの手に、自分の手をそっと重ねた。
ひんやりと冷たい手が、アデルの手を温める。
「どうしたんですか?」
精一杯の強がり。
不敵な笑みを浮かべたアデルは、人の神経を逆撫でする小馬鹿にしたような声で言う。
「お前に俺が利用出来るわけないだろう。逆だ」
金色の瞳が、微かに揺れる。
「俺は例え相手がルイであろうが利用出来る。お前に危険があるとわかっていてもな」
言葉にも、声にも、罪悪感の欠けらもなかった。
だが、ルイは見てしまった。
美しい金色の水面が、一瞬だけ不安の風に揺れる姿を。
「貴方になら、利用されても構いません」
ルイは重ねた手に力を籠め、アデルの手を握り締めた。
無理している様子のない自然な笑顔に、アデルは面食らう。