予想外の言葉ではなかった。
ただ、アデルの中では、メルディ軍の協力はもうしばらく先の話であった。
今、アデルがシェーダ国を裏切ったとなれば、騎士団長たちは喜ぶだろうし、アデルはただの裏切り者となる。
アデルの理想は、彼らを困らせ、尚且つアデルの裏切りを正当化出来るタイミングでメルディへと寝返ることであった。
例えば、市民の反乱が起こった直後などは理想的である。
そして、誰かを巻き込んで計画を進めようとは思わなかった。
自分勝手な反乱に、誰かを巻き込みたくはなかった。
「……俺がするのは協力ではなく、利用だ」
冷たい響きに、ルイは言葉を詰まらせた。
だが、すぐに首を振ると睨むような視線をアデルへと送った。
「私だって、アデルさんを利用するためにここに来たんです」
そうきたか、とアデルは内心で呟いて自分へと向けられた熱烈な視線に、冷たい瞳を返す。
ルイが来たことで、アデルの中に一つの策が浮かんだ。
市民の反乱よりも、ずっとわかりやすく裏切りを正当化出来る方法を、見つけたのだ。